明けましておめでとうございます。
昨年は国の内外ともに激動の年でした。本年は各国に選挙が目白押しなどで、更に激動が激しくなる年になるやも知れぬと、その道の筋からのご託宣が出ているようです。
しかし、少しでも激動が鎮もることを祈らずにはおられません。
本歌仙の連衆は八十路半ばを超えてますます意気軒昂、本年も当意即妙の詠みプリに更に磨きがかかることが期待されるところであります。
本年もどうぞよろしくお願いします。
【表六句】
1、発句(新年) 初日の出雲間の竜に老い重ね 龍峰
今年の干支は辰年、「陽の気が動いて万物が振動するので、活力旺盛になって大きく成長し、形がととのう年」と言われています。
そして自分の年でもあります。そこで、初日の出の雲間に見えたと思った竜になぞらえて、かくありたしと詠んだ。
2、脇(新年) 激震の朝 はてなの二日 九分九厘
不意打ちの元旦地震に日本人は驚く! 昇竜の激しさか、今年の激動の予兆なのか?
3、第三(春) 西方の海春風の来て静まらん 葉有露
明治天皇の歌を思い出し、世界の賢者に自制を祈るばかりです。
4、四句目 (春) 霞の晴れゆく山のあなた 龍峰
春風に霞の晴れて遥か山の果てに幸せがあるかもしれない。
5、月の定座(春・月)春月の影消し去りし輪島の火 九分九厘
6、折端 (雑)友をさそいて彼の地訪ねん 葉有露
2007年能登半島地震の翌年、高校の同じ組だった連中8名(男4・女4)で七尾、穴水、能登を廻ったことがあります。今回の出来事とかさなります。かの大伴家持だったら、どのように語るでしょうか。
【裏十二句】
7、折立 (雑) 登攀のザイルで結ぶ身と心 龍峰
熱い友と岩登り
8、二句目(雑・恋) 君によりおもひならひぬ恋 九分九厘
伊勢物語の業平の本歌より
9、三句目(雑・恋)下校時にふと出会いあり無口のみ 葉有露
青い時代のかすかな思い出
10、四句目(雑) ハンケチなびく北国の丘 龍峰
無口と云えばあの人
11、五句目〔夏) ヒマワリの咲くか咲かずのウクライナ 九分九厘
ハンカチの黄色は幸福をもたらす色。黄色と青色のウクライナの国旗は旗幟鮮明であるが、現在の対ロシア戦況は先行きが全く読めない。
12、六句目(雑) キリスト者知る隣人愛を 葉有露
13、(秋の月) 倉の街のグレコの絵見て月あふぐ 龍峰
14、八句目(秋) 思春期にいたらぬ子の秋思 九分九厘
戦時中、父の里の倉敷に疎開し八歳で終戦。大家族の喧騒から逃れて、すぐ近くの大原美術館によく行ったものだ。中学・高校時代の話で未成年は入場無料、客は殆どいなくて二階の大広間真ん中にある革製の大きなソファに寝そべる事が出来た。長時間、グレコと一緒にいた思い出がよみがえる。
15、九句目 (秋)父母しのぶ疎開先での「里の秋」 葉有露
童謡「里の秋」がラジオで発表されたのが、昭和20年4月とのこと。この時、小生は出雲大社に祖母と二人だけで疎開していました。
16、十句目 (雑) 朝方夢に見し珊瑚礁 龍峰
「里の秋」の歌詞の三番に「椰子の島」が歌われている。
17、(花の定座) 簪に花のひとひら留まりて 九分九厘
珊瑚が使われた簪をイメージしました。
18、折端(春) 蝶ついばみて春味わいぬ 葉有露
【名残の表十二句】
19、折立〔春) 挙げ句の果ては馬の骨に山笑ふ 龍峰
蝶よ花よと育てられても。
20、二句目(雑) 痩せ男の舞ひし能舞台 九分九厘
前句の不気味さから、能面痩せ男を連想した。
21、三句目(雑)静や静八幡宮は静まりて 葉有露
ご存知、鎌倉・鶴岡八幡宮での出来事です。
22、四句目(雑) 法螺貝響く茜の遠嶺(とおね) 龍峰
彼女は「しずやしず---」とともに「吉野山峰の白雪ふみわけて···」を舞ったことより、吉野山。
23、五句目(雑) 聖霊まねく一千人の交響詞 九分九厘
N響定期公演が昨年末に2000回となり、記念にマーラの第8番「一千人の交響曲」が演奏された。出演者は総計800人を超える。
24、六句目 (雑)奴隷船長我を知りたり 葉有露
この船長は,Amazing Graceの作詞者となった Joan Newton のことです。この曲は教会で、賛美歌・聖歌として度々歌われます。
25、七句目 (冬·恋) 冬銀河巡る旅妻の手握る 龍峰
令和XX年新婚旅行に銀河巡りのツアーを選んだ。
26、八句目〔雑・恋) 乾坤廻る二人のために 九分九厘
前句の解釈に難渋しました。作者の意図は問わずして、次の解釈にて句を付けました。Amazing graceの歌詞をwikipediaで調べました。六節の最後の二節にあるのが、太陽の光も失せてしまう永劫の世界。その宇宙の果てにおいても神の恩寵のお陰で信者の幸福が保たれるとあります。
龍峰さんの謎の「令和xx年の新婚旅行」は、來生も今の奥様とご一緒で手を手を取り合って生きていかれると言う意味と理解しました。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる天の河を旅する銀河鉄道も、死者達の旅を意味します。賢治は法華経の心酔者でありました。如来様もキリストの神も時空を超えた宇宙にいらっしゃいます。
大変な深読み有り難うございます。単純に、同じ船でも、近未来に宇宙船に乗れればいいなと思った次第です。(龍峰)
27、九句目 (雑)天と地を造りたる神お疲れか 葉有露
知性と理性の劣化。中世の暗黒時代を思わせる今、神の審判は何処。
28、十句目 (雑) 出雲に出掛け地酒でパーと 龍峰
呑んで騒げばいい知恵が、また浮かぶかも知れない。
29、月の定座〔秋) 月愛でつ一斉放尿寮コンパ 九分九厘
京大吉田寮の伝統行事、このあと大学病院の看護婦寮におしかけ、門前にて寮歌を歌いながら素っ裸で踊る。定例の年一回のことなので大歓迎された。
30、折端(秋) 釣瓶落としを子ら忘れおり 葉有露
夕食の時間が来ても、楽しい遊びの方がよい時期がありました。
【名残の裏六句】
31、折立 (秋) 今の世は誰が儲かる野分後 龍峰
昭和30年代までは、釣瓶の桶は桶屋が造っていたが。
32、二句目(雑) 曲肱の楽しみこれ如何 九分九厘
『論語』述而より
33、三句目(雑) 古人述ぶ君子義喩(さと)り少人利 葉有露
同じく孔子(里仁第四)に聞いてみました。
34、四句目 (春) 春風にのる朝の声明 龍峰
孔子と同じ頃に釈迦が生まれた。
35、花の定座(春) 夙川に沿ひし街中花を待つ 九分九厘
中印より日本に戻ってきました。今年も花見を心待ちにしています。
36、挙句(春) 蕾ふくらみ春に気づきぬ 葉有露
以上
歌仙山手会(其の二) 初日の出の巻 2024、1,1~2024,1,23 | ||||
【表六句】 | 投句 | 作者 | コメント | |
1 | 発句 (新年) | 初日の出雲間の竜に老い重ね | 龍峰 | 天象、聳物、生類、述懐 |
2 | 脇句 (新年) | 激震の朝 はてなの二日 | 九分九厘 | 時分 |
3 | 第三 (春) | 西方の海春風の来て静まらん | 葉有露 | 水辺、春 |
4 | 第四 (春) | 霞の晴れゆく山のあなた | 龍峰 | 聳物、山類 |
5 | 第五 (春・月) | 春月の影消し去りし輪島の火 | 九分九厘 | 春、天象、名所 |
6 | 折端 (雑・恋) | 友をさそいて彼の地訪ねん | 葉有露 | 人倫の運び |
【裏十二句】 | ||||
7 | 折立 (雑) | 登攀のザイルで結ぶ身と心 | 龍峰 | 人倫の運び |
8 | 第二 (雑・恋) | 君によりおもひならひぬ恋 | 九分九厘 | 人倫の運び。恋 |
9 | 第三 (雑・恋) | 下校時にふと出会いあり無口のみ | 葉有露 | |
10 | 第四 (雑) | ハンケチなびく北国の丘 | 龍峰 | 衣類、山類 |
11 | 第五 (夏) | ヒマワリの咲くか咲かずのウクライナ | 九分九厘 | 植物、名所 |
12 | 第六 (雑) | キリスト者知る隣人愛を | 葉有露 | 神祇 |
13 | 第七 (秋の月) | 倉の街のグレコの絵見て月あふぐ | 龍峰 | 人倫、天象 |
14 | 第八 (秋) | 思春期にいたらぬ子の秋思 | 九分九厘 | 人倫 |
15 | 第九 (秋) | 父母しのぶ疎開先での「里の秋」 | 葉有露 | 人倫、芸能 |
16 | 第十 (雑) | 朝方夢に見し珊瑚礁 | 龍峰 | 時分、水辺 |
17 | 第十一 (春の花) | 簪に花のひとひら留まりて | 九分九厘 | 衣類、植物 |
18 | 折端 (春) | 蝶ついばみて春味わいぬ | 葉有露 | 生類、春 |
【名残の表十二句】 | ||||
19 | 折立 (春) | 挙げ句の果ては馬の骨に山笑ふ | 龍峰 | 生類、山類 |
20 | 第二 (雑) | 痩せ男の舞ひし能舞台 | 九分九厘 | 人倫の運び、芸能 |
21 | 第三 (雑) | 静や静八幡宮は静まりて | 葉有露 | 神祇 |
22 | 第四 (雑) | 法螺貝響く茜の遠嶺(とおね) | 龍峰 | 山類、同字 |
23 | 第五 (雑) | 聖霊まねく一千人の交響詞 | 九分九厘 | 神祇、人倫の運び、芸能、同字 |
24 | 第六 (雑) | 奴隷船長我を知りたり | 葉有露 | 人倫の運び、人倫の運び、人倫の運び |
25 | 第七 (冬・恋) | 冬銀河巡る旅妻の手握る | 龍峰 | 冬、天象、旅、人倫、恋 |
26 | 第八 (雑・恋) | 乾坤廻る二人のために | 九分九厘 | 人倫の運び |
27 | 第九 (雑) | 天と地を造りたる神お疲れか | 葉有露 | 神祇 |
28 | 第十 (雑) | 出雲に出掛け地酒でパーと | 龍峰 | 名所、植物 |
29 | 第十一(秋の月) | 月愛でつ一斉放尿寮コンパ | 九分九厘 | 天象、居所 |
30 | 折端 (秋) | 釣瓶落としを子ら忘れおり | 葉有露 | 夜分、人倫 |
【名残の裏六句】 | ||||
31 | 折立 (秋) | 今の世は誰が儲かる野分後 | 龍峰 | |
32 | 第二 (雑) | 曲肱の楽しみこれ如何 | 九分九厘 | 人倫の運び |
33 | 第三 (雑) | 古人述ぶ君子義喩(さと)り少人利 | 葉有露 | 人倫の運び、人倫の運び、人倫の運び |
34 | 第四 (雑) | 春風にのる朝の声明 | 龍峰 | 春、時分、釈教 |
35 | 第五(春の花) | 夙川に沿ひし街中花を待つ | 九分九厘 | 名所、植物 |
36 | 挙句 (春) | 蕾ふくらみ春に気づきぬ | 葉有露 | 植物、春 |
注記) | ||||
緑;去り嫌いの該当語 青;去り嫌い対象語 赤;式目抵触の文言 | ||||
朱;検討課題 | ||||
主に「歌仙入門要諦」「歌仙・人倫」「去り嫌いと句数」より検討した。 | ||||
式目抵触 | ||||
1)NO7「身」・人倫の運びに対しNO8[君」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。 | ||||
2)NO14「子」・人倫に対しNO15「父母」・人倫は句数2・2句去りに抵触。 | ||||
3)NO19「山」・山類に対しNO22「遠嶺」・山類は句数2・3句去りに抵触。 | ||||
4)NO21「八幡宮」・神祇に対しNO23「聖霊」・神祇は句数2・3句去りに抵触。 | ||||
5)NO22「響く」・同字に対しNO23「交響詩」・同字は句数1句・3句去りに抵触。 | ||||
6)NO24「奴隷船長」・人倫の運びに対しNO25「妻」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。 | ||||
7)NO30「子」・人倫に対しNO32「曲肱」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。 |