歌仙山手会

 ブログで互いに歌仙を詠み継ぎ、巻を終えたあと酒食を共にして反省会を楽しんでいます。

歌仙山手会(其の四)夙川舞櫻の巻

 

 
夙川の櫻

 夙川の桜は、その両岸に香櫨園浜から苦楽園口北まで、約1660本植わっています。昭和24年当時の西宮市長辰馬氏が、戦後の荒廃した世相を和らげるべく発案したとのことです。桜は7種類で、その中に自然交配種の西宮権現平桜と夙川舞櫻も入っています。

 

 

  夙川舞櫻の舞い姿です。4月9日にとりました。

 

【表六句】

1, 発句(春) 夙櫻愛でる文人学者多々         葉有露

 文人では、丹羽文雄井上靖谷崎潤一郎野坂昭如小松左京小田実ら、学者では湯川秀樹・伏見康治・五百旗頭眞、俳人もいます山口誓子

 

2, 脇(春)  言の葉それぞれ春爛漫         九分九厘

 

3, 第三(春) ねぎ坊主孤高守るも浮かれ出て       龍峰

 

4, 四句目(雑) 世の風に乗り身をまかせるか       葉有露

 

5, 月の定座(秋) ゆらゆらと水面の裏の月の影     九分九厘

 

6,折端(秋)     一山越せば五彩の紅葉           龍峰

 

 

【裏十二句】

7、折立(秋) 鳴く鹿の声なやましく人を呼ぶ      葉有露

 

8、二句目(雑・恋) マリリンモンローに恋をする   九分九厘

 

9、三句目   (雜 - 恋)  惚れたはれたも三日で尻にしかれ          龍峰

   モンローと言えばヒップも。

 

10、四句目(雑)   花の恥じらい夢のごとしよ      葉有露

 

11、五句目(夏)   芍薬のひかり浴びてし明日に咲く  九分九厘

 芍薬花言葉は「恥じらい」と知りました。

 

12、六句目  (雜)       脂乗り切る季節の待たる                龍峰

  立てば芍薬座れば牡丹、しかし花より団子が良い。

 

13, 月の定座(秋)  月の夜のお囃子の音ゆるゆると     葉有露

 

14, 八句目(秋)   寅さんバパーンと秋祭           九分九厘

 

15, 九句目 (秋)     秋夕日に片手拝みの三度笠            龍峰

  今も昔も、風の吹くままの旅がらすには惹かれるものがありますね。

 

16,十句目(雑)   企業戦士も風の向くまま                 葉有露

 

17, 花の定座〔春)  花散りぬ行方ふたしか実質賃金     九分九厘

 

18、折端 (春)    月給渡し気ままに朝寝                      龍峰

【名残の十二句】

19、折立 (春)  春の日に看護師として孫は行く              葉有露

 

20, 二句目〔春)  新面目あるべし若緑                  九分九厘

 會津八一の「学規四ケ条」の一節、「日々新面目あるべし」より。

 

21, 三句目(雑)   カシュガルの市場に溢ふる人と果物                     龍峰

    會津八一と言えば奈良、その奈良はシルクロードの終点、シルクロードで栄えたオアシスの代表都市がカシュガル。曾て訪れた時、市場には色々な果物が山積み、人もあふれていた。

 

22, 四句目(雑)  熱き大地に響く打楽器よ                             葉有露

 打楽器は二個一組の太鼓、片面太鼓があり、そのたチャルメラ吹奏楽器、笛弓奏楽器、二弦の撥弦楽器、撥楽器もあります。

         

23, 五句目(雑)  坤軸に根をおろしたる雪舟墨                         九分九厘 

 今日から京都博物館で「雪舟展」が始まります。坤軸とは地球の両極を結ぶ軸のこと。

 

24, 六句目 (冬)  千山の鳥寒空に消ゆ                龍峰

  雪舟と言えば、 中唐の詩人柳宗元の「江雪」と題する一首は正に水墨画の世界。

      千山鳥飛絶

      万径人蹤滅

      孤舟蓑笠翁

      独釣寒江雪

一節を拝借。

 

25, 七句目(冬) 人絶えて雪中孤舟釣果待つ       葉有露

 同じく柳宗元の「江雪」の後半を借用しました。悪しからずご了承を。

終始転勤族であった小生も、海外も含め各地を巡りました。柳宗元の心情に思いを馳せています。

 

26,八句目(雑・恋) 万事装ふに君かへりみず    九分九厘

 

27, 九句目   (雑·恋)  思いつのり藁をもすがる辻占い  龍峰

 

28, 十句目(雑-恋) 恋の炎もやがて消え失せ    葉有露

 

29, 月の定座〔秋) 月やあらぬ酒にむせびし男あり  九分九厘

 

30, 折端 (秋)    秋茜群れ飛ぶ五十鈴川       龍峰

 

【名残の六句】

31, 折立(秋)   身を清め悔い流さんか秋浅し    葉有露

 

32, 二句目〔雑)  されど未だ木鶏たりえず     九分九厘

 

33, 三句目   (雑)           囮かアート当世の姿なり     龍峰

    今様に云えばバードカービングとか。

 

34, 四句目(雑)  疑似餌にも心惹かれ                         葉有露

 

35,花の定座(春)    夙川の魚も愛でる花筏                    九分九厘

 花筏を下から眺める魚も、やはり花より団子でしょうね。

 

36、挙句 (春)     六甲仰ぐ峰揚げ雲雀                 龍峰

 

     

 

 

 

 

歌仙山手会(其の三)  梅二月の巻

    

 

 今年は、予想も立てられない騒々しい年になるのでしょう。政界の裏金問題の行方、春闘賃上げ、岸田政権の命運と衆院解散、トランプの返り咲き、株の大暴落、ウクライナパレスチナ、台湾有事 etc、問題の種は尽きそうもありません。

 

【表六句】

No1, 発句 (春)  抹茶入れ命を語る梅二月        九分九厘

 二月は私の誕生月です。八十七歳になりますが、まだまだやりたいことが沢山あります。

 

No,2  脇 (春)  庭先に見ゆ降る春の雪         葉有露

  もう暫くはこんな日もありそうです。

 

No3, 第三(春)     風光る瀬戸に新船漕ぎ出でて       龍峰

     「庭」の相対付句として広い海を選んだ。

 

No,4  四句目(雑)  石鎚の天空より檄す                              九分九厘

  海から四国最高峰の石鎚山に登りました。

 

No,5 月の定座(秋)   かぐや姫月の都に訪ねんか            葉有露

  JAXAに搭乗手続きを始めます。

 

No,6    折端  (秋)   赤い手拭い振るきのこがり           龍峰 

   かぐや姫の「神田川」の一節頂く。

 

【裏十二句】

No,7 折立(秋) 手折りても芯を秘めをり女郎花   九分九厘

 「神田川」が流行った '70年代始めのころ、高度成長から一転して安保闘争石油ショック・公害問題などがあり、戦後の日本が変った時代であった。まだ国民の皆が貧しかったが、戦前戦後を生きてきた女性も強かった。

 

No,8 二句目(雑)その愛の深きマザーテレサよ    葉有露

  女郎花の花言葉は「約束を守る」とか。テレサさんは神との約束をを生涯守りつづけました。

                

No,9 三句目(雑・恋)曲者呼ばわりされたる二人なり  龍峰

 昔から「恋は曲者」、人の分別を奪う。

 

No10, 四句目(雑・恋)  ただひとすじのおもひになれど  九分九厘

 

No,11 五句目(雑) 雲間より光さす見え希望とす    葉有露

 

No,12 六句目  (雑)    天下無双の花形力士            龍峰

     雲間に光と言えば雷さん、江戸の人気者為右衛門。

 

No,13  月の定座〔夏) 勝ち星の十五数へし夏の月    九分九厘

 

No,14  八句目 (夏) 心太あり夜を過ごしつ       葉有露

 熱戦を振りかえっています。

                 

No,15  九句目    (雑) 黙々とまつほの浦に玉藻干す  龍峰

  心太と言えば天草が原料。かの有名な「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」を少しばかり拝借した。

 

No,16  十句目 (雑) 復興のはしり能登の揚げ塩    九分九厘

  能登名産の、揚げ塩をつくる復興の様子をTVで見ました。揚げ浜に、桶で黙々と海水を撒いている日焼けした老人の姿に圧倒されました。

 

No,17 花の定座(春)花便り確かめる日々宴待つ     葉有露

  老人が、夙川の堤でお待ちしております。

                  

No,18  折端 (春) 春風にのる渋いバリトン            龍峰

 

【名残の表十二句】

 No,19 折端(春) ふるさとは勿忘草のプロバンス   九分九厘

 バリトンが唄う歌となると、若い時に習ったヴェルディー「椿姫」の「プロバンスの海と陸」がすぐに浮かんでくる。以下にその歌を聴いてみて下さい。勿忘草が春の季語ですが、英語名は「forget-me-not」です。

 1、大昔のイタリア人  大歌手  レオ・ヌッチ 

   https://tsvocalschool.com/classic/di-provenza/

 2、まだ現役だが、そろそろ引退が近いアメリカ人歌手  トマス・ハンプソン  

    https://www.youtube.com/watch?v=v69gHTw71uM

 

No,20 二句目(雑)一期一会かそれが人生        葉有露

                     

No,21 三句目   (雑)  セーヌながめ抹茶吸い切る静寂さ   龍峰

   一期一会は利休の教え。

 

No,22 四句目(雑)ジャングル三十年小野田さん    九分九厘

 人生いろいろ。

 

No,23 五句目(冬)凩の身にしみわたる我有りて    葉有露 

 ルパング島から帰還した小野田少尉にとって、初めての冬は。  

               

No,24 六句目    (冬·恋)   熱燗の後の寝物語                        龍峰

 

No,25 七句目(雑・恋)いつをかぎりと我の心つくしつ  九分九厘

 

No,26 八句目(雑)有為転変か生生流転         葉有露  

                  

No,27 九句目   (雜) 人の世は浮き世歌留多の縄を縫う   龍峰

戦前の唄、藤田まさと作詞の「流転」の一節頂いた。

 

No,28 十句目(雑) 果てはあけてびっくり玉手箱   九分九厘

 

No,29 (秋の月)法善寺月眺めし日夢のごと  葉有露

大阪の難波・南には若者に手頃な飲食店が多くあります。

学生向きの店もありお世話になりました。

 

No,30  折端   (秋) 放吟すれど虫鳴き止まず          龍峰

 

【名残の裏六句】

 No,31 折立〔秋) 長き夜のバックコーラスの歌姫たち  九分九厘

 前句の光景の言い換えを試みました。トップシンガーは作者の龍峰さん、バックシンガー達はまわりの可愛い虫と見立てました。『バックコーラスの歌姫たち』と題するアカデミー賞受賞のアメリカ映画があります。バックの歌姫達の、表舞台には出られない人生物語です。

 

No,32 二句目(雑)カナリヤ達は顔赤らめる       葉有露

 

No,33 三句目   (雜) 銀の櫂備ふ置物バブル中      龍峰

 カナリヤと言えば童謡の「カナリヤ」をヒントに。       

 

No,34 四句目(雑)「もしトラ」怖れ株価急落       九分九厘

 

No,35( 春の花) 夙川に「舞櫻」あり友を待つ       葉有露 

 櫻の名所西宮には、地元固有種で「西宮権平平櫻と「夙川舞櫻」があります。後者は阪急夙川駅南の河川敷緑地に育っています。 

                 

No,36 挙句 (春)  山へ港へ初つばめ翔ぶ        龍峰

     

                            以上

歌仙検討結果

  歌仙山手会(其の三) 梅二月の巻  2024、2,4~2024、2,29   
  【表六句】 投句 作者 コメント
1 発句  (春) 抹茶入れ命を語る梅二月 九分九厘 食物、述懐、植物
2 脇句   (春) 庭先に見ゆ降る春の雪 葉有露 居所、春、降物
3 第三 (春)  風光る瀬戸に新船漕ぎ出でて 龍峰 水辺、旅
4 第四 (雑)  石鎚の天空より檄す 九分九厘 山類
5 第五   (秋の月)  かぐや姫月の都に訪ねんか 葉有露 人倫、月
6 折端 (秋) 赤い手拭い振るきのこがり 龍峰 衣類、植物
  【裏十二句】      
7 折立  (秋) 手折りても芯を秘めをり女郎花 九分九厘 人倫の運び、植物
8 第二   (雑) その愛の深きマザーテレサよ 葉有露 人倫
9 第三   (雑・恋) 曲者呼ばわりされたる二人なり 龍峰 恋、人倫の運び
10 第四   (雑・恋) ただひとすじのおもひになれど 九分九厘
11 第五    (雑) 雲間より光さす見え希望とす 葉有露 聳物
12 第六 (雑)  天下無双の花形力士 龍峰 人倫の運び
13 第七   (夏の月) 勝ち星の十五数へし夏の月 九分九厘 夏、月
14 第八 (夏) 心太あり夜を過ごしつ 葉有露 食物、時分
15 第九 (雑) 黙々とまつほの浦に玉藻干す 龍峰 水辺、植物
16 第十 (雑) 復興のはしり能登の揚げ塩 九分九厘 名所、食物
17 第十一  (春の花) 花便り確かめる日々宴待つ 葉有露 植物、芸能
18 折端  (春) 春風にのる渋いバリトン 龍峰 春、芸能
  【名残の表十二句】      
19 折立 (春) ふるさとは勿忘草のプロバンス 九分九厘 植物、名所
20 第二    (雑) 一期一会かそれが人生 葉有露 芸能、述懐
21 第三 (雑) セーヌながめ抹茶吸い切る静寂さ 龍峰 水辺、食物
22 第四 (雑)  ジャングル三十年小野田さん 九分九厘 人倫
23 第五 (冬) 凩の身にしみわたる我有りて 葉有露 人倫の運び、述懐、人倫の運び
24 第六 (冬・恋) 熱燗の後の寝物語 龍峰 食物、恋
25 第七 (雑・恋) いつをかぎりと我の心つくしつ 九分九厘 人倫の運び、恋
26 第八   (雑) 有為転変か生生流転 葉有露 述懐、述懐
27 第九   (雑) 人の世は浮き世歌留多の縄のごと 龍峰 述懐、芸能
28 第十 (雑) 果てはあけてびっくり玉手箱 九分九厘  
29 第十一(秋の月) 法善寺月眺めし日夢のごと 葉有露 名所、月
30 折端 (秋) 放吟すれど虫鳴き止まず 龍峰 芸能、生類
  【名残の裏六句】      
31 折立 (秋) 長き夜のバックコーラスの歌姫たち 九分九厘 時分、芸能、芸能
32 第二 (雑) カナリヤ達は顔赤らめる 葉有露 生類、人倫の運び
33 第三 (雑) 銀の櫂備ふ置物バブル中 龍峰  
34 第四 (雑) 「もしトラ」怖れ株価急落  九分九厘 人倫
35 第五(春の花) 夙川に「舞櫻」あり友を待つ 葉有露 名所、植物、人倫の運び
36 挙句 (春) 山へ港へ初つばめ翔ぶ 龍峰 山類、水辺、生類
         
  注記)      
    緑;去り嫌いの該当語 青;去り嫌い対象語 赤;式目抵触の文言  
    朱;検討課題    
   主に「歌仙入門要諦」「歌仙・人倫」「去り嫌いと句数」より検討した。
         
  式目抵触      
  1)NO9「二人」・人倫の運びはNO7「手」・人倫に対し句数2句・2句去りに抵触。
  2)NO16「塩」・食物はNO14「心太」・食物に対し句数2・2句去りに抵触。
  3)NO17「花」・植物はNO15「玉藻」・植物に対し句数2・2句去りに外観上抵触ではあるが、
   しかし、この場合は予めNO17「花」は「春の花」で定まっており、NO15にて植物を詠みこむことを
   避けるべきであった。    
         
  検討課題      
  1)NO5「かぐや姫」は架空の人物である。今回は「人倫」の扱いとしている。その是非。
   協議結果;物語など架空の人物は人倫として扱わない。    
  2)NO8「愛」は式目では見受けられない。カテゴリを決めるべきか否か。 結論;カテゴリを決めない。
   但し、愛には色々な意味があり、1語では定められない。    
   例 人類愛、慈愛、恋愛、家族愛、物への愛、動植物への愛、自然への愛等々
  3)NO20「一期一会」は茶道の言葉。茶道は芸能か釈教か。今回は芸能として扱っている。
   結論;芸能として扱う。    
  4)NO35「友」・人倫の運びの式目適用は如何にすべきか。結論;人倫として扱わない。
         

        

 

 

歌仙山手会(其の二)  初日の出の巻

 

茅淳の海の初日の出

明けましておめでとうございます。

 

昨年は国の内外ともに激動の年でした。本年は各国に選挙が目白押しなどで、更に激動が激しくなる年になるやも知れぬと、その道の筋からのご託宣が出ているようです。

しかし、少しでも激動が鎮もることを祈らずにはおられません。

本歌仙の連衆は八十路半ばを超えてますます意気軒昂、本年も当意即妙の詠みプリに更に磨きがかかることが期待されるところであります。

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

【表六句】

1、発句(新年) 初日の出雲間の竜に老い重ね    龍峰  

 今年の干支は辰年、「陽の気が動いて万物が振動するので、活力旺盛になって大きく成長し、形がととのう年」と言われています。

そして自分の年でもあります。そこで、初日の出の雲間に見えたと思った竜になぞらえて、かくありたしと詠んだ。

 

2、脇(新年)  激震の朝 はてなの二日     九分九厘 

  不意打ちの元旦地震に日本人は驚く! 昇竜の激しさか、今年の激動の予兆なのか?

 

3、第三(春) 西方の海春風の来て静まらん    葉有露

  明治天皇の歌を思い出し、世界の賢者に自制を祈るばかりです。

 

4、四句目  (春)    霞の晴れゆく山のあなた            龍峰

        春風に霞の晴れて遥か山の果てに幸せがあるかもしれない。

         

5、月の定座(春・月)春月の影消し去りし輪島の火  九分九厘

 

6、折端 (雑)友をさそいて彼の地訪ねん    葉有露

   2007年能登半島地震の翌年、高校の同じ組だった連中8名(男4・女4)で七尾、穴水、能登を廻ったことがあります。今回の出来事とかさなります。かの大伴家持だったら、どのように語るでしょうか。

                  

【裏十二句】

7、折立  (雑) 登攀のザイルで結ぶ身と心      龍峰

        熱い友と岩登り

 

8、二句目(雑・恋)  君によりおもひならひぬ恋  九分九厘

  伊勢物語の業平の本歌より

 

9、三句目(雑・恋)下校時にふと出会いあり無口のみ 葉有露

  青い時代のかすかな思い出

                   

10、四句目(雑)   ハンケチなびく北国の丘           龍峰

         無口と云えばあの人

 

11、五句目〔夏) ヒマワリの咲くか咲かずのウクライナ  九分九厘

  ハンカチの黄色は幸福をもたらす色。黄色と青色のウクライナの国旗は旗幟鮮明であるが、現在の対ロシア戦況は先行きが全く読めない。

 

12、六句目(雑) キリスト者知る隣人愛を     葉有露 

               

13、(秋の月) 倉の街のグレコの絵見て月あふぐ   龍峰

 

14、八句目(秋) 思春期にいたらぬ子の秋思   九分九厘

 戦時中、父の里の倉敷に疎開し八歳で終戦。大家族の喧騒から逃れて、すぐ近くの大原美術館によく行ったものだ。中学・高校時代の話で未成年は入場無料、客は殆どいなくて二階の大広間真ん中にある革製の大きなソファに寝そべる事が出来た。長時間、グレコと一緒にいた思い出がよみがえる。

 

15、九句目 (秋)父母しのぶ疎開先での「里の秋」 葉有露 

 童謡「里の秋」がラジオで発表されたのが、昭和20年4月とのこと。この時、小生は出雲大社に祖母と二人だけで疎開していました。  

                

16、十句目  (雑)  朝方夢に見し珊瑚礁            龍峰

    「里の秋」の歌詞の三番に「椰子の島」が歌われている。

 

17、(花の定座) 簪に花のひとひら留まりて   九分九厘

 珊瑚が使われた簪をイメージしました。

 

18、折端(春) 蝶ついばみて春味わいぬ     葉有露

 

【名残の表十二句】

19、折立〔春) 挙げ句の果ては馬の骨に山笑ふ    龍峰

    蝶よ花よと育てられても。

 

20、二句目(雑) 痩せ男の舞ひし能舞台      九分九厘

 前句の不気味さから、能面痩せ男を連想した。

 

21、三句目(雑)静や静八幡宮は静まりて      葉有露  

 ご存知、鎌倉・鶴岡八幡宮での出来事です。 

                 

22、四句目(雑) 法螺貝響く茜の遠嶺(とおね)     龍峰

     彼女は「しずやしず---」とともに「吉野山峰の白雪ふみわけて···」を舞ったことより、吉野山

 

23、五句目(雑) 聖霊まねく一千人の交響詞      九分九厘

 N響定期公演が昨年末に2000回となり、記念にマーラの第8番「一千人の交響曲」が演奏された。出演者は総計800人を超える。

 

24、六句目 (雑)奴隷船長我を知りたり     葉有露

 この船長は,Amazing Graceの作詞者となった Joan Newton のことです。この曲は教会で、賛美歌・聖歌として度々歌われます。

 

25、七句目  (冬·恋) 冬銀河巡る旅妻の手握る      龍峰

     令和XX年新婚旅行に銀河巡りのツアーを選んだ。

 

26、八句目〔雑・恋) 乾坤廻る二人のために     九分九厘

 前句の解釈に難渋しました。作者の意図は問わずして、次の解釈にて句を付けました。Amazing graceの歌詞をwikipediaで調べました。六節の最後の二節にあるのが、太陽の光も失せてしまう永劫の世界。その宇宙の果てにおいても神の恩寵のお陰で信者の幸福が保たれるとあります。

 龍峰さんの謎の「令和xx年の新婚旅行」は、來生も今の奥様とご一緒で手を手を取り合って生きていかれると言う意味と理解しました。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に出てくる天の河を旅する銀河鉄道も、死者達の旅を意味します。賢治は法華経の心酔者でありました。如来様もキリストの神も時空を超えた宇宙にいらっしゃいます。

 大変な深読み有り難うございます。単純に、同じ船でも、近未来に宇宙船に乗れればいいなと思った次第です。(龍峰)

 

27、九句目 (雑)天と地を造りたる神お疲れか    葉有露

 知性と理性の劣化。中世の暗黒時代を思わせる今、神の審判は何処。   

              

28、十句目 (雑) 出雲に出掛け地酒でパーと      龍峰

     呑んで騒げばいい知恵が、また浮かぶかも知れない。

 

29、月の定座〔秋) 月愛でつ一斉放尿寮コンパ   九分九厘

 京大吉田寮の伝統行事、このあと大学病院の看護婦寮におしかけ、門前にて寮歌を歌いながら素っ裸で踊る。定例の年一回のことなので大歓迎された。

 

30、折端(秋) 釣瓶落としを子ら忘れおり   葉有露

  夕食の時間が来ても、楽しい遊びの方がよい時期がありました。

 

 

 【名残の裏六句】

31、折立   (秋)  今の世は誰が儲かる野分後      龍峰

     昭和30年代までは、釣瓶の桶は桶屋が造っていたが。

 

32、二句目(雑)  曲肱の楽しみこれ如何       九分九厘

 『論語』述而より

 

33、三句目(雑) 古人述ぶ君子義喩(さと)り少人利  葉有露

 同じく孔子(里仁第四)に聞いてみました。 

 

34、四句目  (春)  春風にのる朝の声明        龍峰

       孔子と同じ頃に釈迦が生まれた。

 

35、花の定座(春)  夙川に沿ひし街中花を待つ    九分九厘

 中印より日本に戻ってきました。今年も花見を心待ちにしています。

 

36、挙句(春)  蕾ふくらみ春に気づきぬ       葉有露

 

                            以上

  歌仙山手会(其の二) 初日の出の巻  2024、1,1~2024,1,23   
  【表六句】 投句 作者 コメント
1 発句  (新年) 初日の出雲間の竜に老い重ね 龍峰 天象、聳物、生類、述懐
2 脇句   (新年) 激震の朝 はてなの二日 九分九厘 時分
3 第三 (春) 西方の海春風の来て静まらん 葉有露 水辺、春
4 第四 (春) 霞の晴れゆく山のあなた 龍峰 聳物、山類
5 第五   (春・月) 春月の影消し去りし輪島の火 九分九厘 春、天象、名所
6 折端 (雑・恋) 友をさそいて彼の地訪ねん 葉有露 人倫の運び
  【裏十二句】      
7 折立  (雑) 登攀のザイルで結ぶ身と心 龍峰 人倫の運び
8 第二   (雑・恋) 君によりおもひならひぬ恋 九分九厘 人倫の運び。恋
9 第三   (雑・恋) 下校時にふと出会いあり無口のみ 葉有露  
10 第四   (雑) ハンケチなびく北国の丘 龍峰 衣類、山類
11 第五    (夏) ヒマワリの咲くか咲かずのウクライナ 九分九厘 植物、名所
12 第六 (雑) キリスト者知る隣人愛を 葉有露 神祇
13 第七   (秋の月) 倉の街のグレコの絵見て月あふぐ 龍峰 人倫、天象
14 第八 (秋) 思春期にいたらぬ子の秋思 九分九厘 人倫
15 第九 (秋) 父母しのぶ疎開先での「里の秋」 葉有露 人倫、芸能
16 第十 (雑) 朝方夢に見し珊瑚礁 龍峰 時分、水辺
17 第十一  (春の花) 簪に花のひとひら留まりて 九分九厘 衣類、植物
18 折端  (春) 蝶ついばみて春味わいぬ 葉有露 生類、春
  【名残の表十二句】      
19 折立 (春) 挙げ句の果ては馬の骨に山笑ふ 龍峰 生類、山類
20 第二    (雑) 痩せ男の舞ひし能舞台 九分九厘 人倫の運び、芸能
21 第三 (雑) 静や静八幡宮は静まりて 葉有露 神祇
22 第四 (雑)  法螺貝響く茜の遠嶺(とおね) 龍峰 山類、同字
23 第五 (雑)  聖霊まねく一千人の交響詞 九分九厘 神祇、人倫の運び、芸能、同字
24 第六 (雑) 奴隷船長我を知りたり 葉有露 人倫の運び、人倫の運び、人倫の運び
25 第七 (冬・恋) 冬銀河巡る旅妻の手握る 龍峰 冬、天象、旅、人倫、恋
26 第八   (雑・恋) 乾坤廻る二人のために 九分九厘 人倫の運び
27 第九   (雑) 天と地を造りたる神お疲れか 葉有露 神祇
28 第十 (雑) 出雲に出掛け地酒でパーと 龍峰 名所、植物
29 第十一(秋の月) 月愛でつ一斉放尿寮コンパ 九分九厘 天象、居所
30 折端 (秋) 釣瓶落としを子ら忘れおり 葉有露 夜分、人倫
  【名残の裏六句】      
31 折立 (秋) 今の世は誰が儲かる野分後 龍峰  
32 第二 (雑) 曲肱の楽しみこれ如何 九分九厘 人倫の運び
33 第三 (雑) 古人述ぶ君子義喩(さと)り少人利 葉有露 人倫の運び、人倫の運び、人倫の運び
34 第四 (雑) 春風にのる朝の声明 龍峰 春、時分、釈教
35 第五(春の花) 夙川に沿ひし街中花を待つ 九分九厘 名所、植物
36 挙句 (春) 蕾ふくらみ春に気づきぬ 葉有露 植物、春
         
  注記)      
    緑;去り嫌いの該当語 青;去り嫌い対象語 赤;式目抵触の文言  
    朱;検討課題    
   主に「歌仙入門要諦」「歌仙・人倫」「去り嫌いと句数」より検討した。
         
  式目抵触      
  1)NO7「身」・人倫の運びに対しNO8[君」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。
  2)NO14「子」・人倫に対しNO15「父母」・人倫は句数2・2句去りに抵触。
  3)NO19「山」・山類に対しNO22「遠嶺」・山類は句数2・3句去りに抵触。
  4)NO21「八幡宮」・神祇に対しNO23「聖霊」・神祇は句数2・3句去りに抵触。
  5)NO22「響く」・同字に対しNO23「交響詩」・同字は句数1句・3句去りに抵触。
  6)NO24「奴隷船長」・人倫の運びに対しNO25「妻」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。
  7)NO30「子」・人倫に対しNO32「曲肱」・人倫の運びは句数2・2句去りに抵触。

 

 

 

歌仙山手会(其の一) 東大寺の巻

           

東大寺大仏殿

 神戸の六甲山に馴染の深いメンバーが、山手会と称して連句の勉強を始めました。そろそろ三年近くになろうとしていますが、師匠なしでも漸く歌仙の基本が分かってきたようです。ここで心機一転、Hatena Blog に参入して本格的な歌仙に挑戦することになりました。晩秋の候、歌仙を再スタートするには絶好の時です。メンバーは八十路半ばの俳句愛好者です。

 

【表六句】

1,発句(冬)    青丹によし唐人も居る冬の古寺      葉有露

2,脇 (冬)    時雨来て駆け込む大庇          龍峰

3,第三(秋)    夕焼けの鹿寄せ始むホルンにて     九分九厘

 「鹿寄せ」は秋の季語になっています。冬の風物詩ともいいますが、最近は観光用向けに四季を通じて行っているようです。ホルンはヴェートーベンの「田園」の一節を吹きます。唐人も喜んでいることでしょう。

4,   四句目(秋)   月明かり増し山山寝入る         葉有露

5,五句目(秋〕    峡深き瀬に身をまかす落ち鰻       龍峰

6,折端  (秋)    江戸前に新酒大吟醸          九分九厘

 「江戸前」といえば、今では寿司や天ぷらの素材や調理法を指すことが多いが、もとはといえばウナギに対して使われる言葉であったという。かつての江戸湾はウナギの宝庫。

 

【裏十二句】

7,折立(雑)    隔離棟出でて風あり生を知る       葉有露

  十二日間入院後、退院直後の感想です。   

8,二句目(雑)   ハワイ沖レース参加決意         龍峰

  風と言えば、昔取った杵柄、この際帆にいつも快適な風が吹いているハワイのレースに参加しよう。

9,三句目(雑・恋)  ダイヤモンドに魅せられし乙女いて  九分九厘

  ハワイオアフ島のダイヤモンド・ヘッドに因んで詠みました。

10,四句目(雑)   先の戦い夢幻か              葉有露

11,五句目 (冬)    目をこすりよくよく見れば雪おんな      龍峰

         あれは決して幻ではない。

12,六句目   (雑)    手を取りて溶けて虚しき空       九分九厘

13、七句目(秋の月) 満月を機影行き過ぎ窓を閉め       葉有露

14、八句目(秋)   秋の三井寺母子再会           龍峰

       中秋の名月と言えば、謡曲三井寺」を頂いて。

15、九句目〔秋)   寂滅為楽鐘ぞさやけく響き       九分九厘  

16、十句目(雑)   生きそして死ぬ主と共にいて        葉有露

17、十一句目(春の花) アルプホルン鳴りゆく園は花吹雪      龍峰

         アルプホルンは高山で羊飼いなどの牧童らが互いの連絡のために編み出したとか。

18、十二句目(春)  ドレミの歌に春山淡冶         九分九厘

  前句に「サウンド・オブ・ミュージック」の景が浮かんできました。「春山淡冶にして笑うが如く・・」と続きます。

 恐縮です。「春山淡治」の後半「淡治」の意味をお教えください。(葉有露)

 下記のリンクを開いて下さい。(九分九厘)   

       https://sybrma.sakura.ne.jp/317yamawarau.html

 

【名残の表十二句】

19、折立 (春) 源平の戦船行き春の沖         葉有露

20、二句目(雑)   朝夕の日に輝く螺髪          龍峰

          螺髪は大仏の頭のぶつぶつ

21、三句目(雑・恋) 富士煙ゆくへも知れぬ我が思ひ   九分九厘

  平重衡による南都焼打ちにより大仏焼失。東大寺の再建は鎌倉仏師の出番。西行勧進を各地で行いました。「本歌取り」ならぬ「本歌盗り」になってしまいました。

22、四句目(雑・恋) かの人去りて今は懐かし     葉有露    

23、五句目 (冬)    サントノレ通り闊歩すマフラーよ           龍峰

24、六句目(雑)  ブティック物色財布は細る     九分九厘

25、七句目(雑)  かって銀座とはいえヒルズ雲の上   葉有露

26、八句目 (雑)   道風目覚めたり書道とや           龍峰

        銀座と言えば柳、道風は柳に飛び付くカエルを見て、はたと思いついた。(龍峰)

27、九句目(雑) 浄瑠璃の小屋に吹きいる鳴門風   九分九厘

  浄瑠璃小野道風青柳硯」に付けます。淡路の南に常設の浄瑠璃小屋があります。

28、十句目(雑) 旨酒積みし船遠ざかる      葉有露

29、(秋の月)  志士たちの議論諤々夜半の月   龍峰

30、折端〔秋)  紅葉且つ散る人気も無くて    九分九厘 

 

【名残の裏六句】

31、折立(秋) 錦木に見送られおり歌仙旅      葉有露

32、二句目 (雑) 出で湯久々伸びし髭剃る        龍峰

33、三句目(雑)さてとそろそろ決戦か巌流島    九分九厘

34、四句目(雑)仕事の後の冷酒うれし        葉有露

35、花の定座(春)花の香の風のさそひに旅支度     龍峰

  古今集十三紀友則の歌

   「花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯誘ふしるべにはやる」

  をベースに詠んだ。            

36、挙句(春) のどけき春の日の静ごころ       九分九厘

 

                   以上

 

  歌仙山手会(其の一) 東大寺の巻  2023、11,14~2023,12,11   
  【表六句】 投句 作者 コメント  
1 発句  (冬) 青丹によし唐人も居る冬の古寺  葉有露 人倫の運び、冬、釈教  
2 脇句   (冬) 時雨来て駆け込む大庇  龍峰 降物、居所  
3 第三 (秋) 夕焼けの鹿寄せ始むホルンにて 九分九厘 時分、生類、芸能  
4 第四 (秋の月) 月明かり増し山山寝入る 葉有露 天象、山類  
5 第五   (秋)  峡深き瀬に身をまかす落ち鰻 龍峰 山類、水辺、人倫の運び、異生類  
6 折端 (秋) 江戸前に新酒大吟醸 九分九厘 食物、食物、食物  
  【裏十二句】        
7 折立  (雑) 隔離棟出でて風あり生を知る 葉有露 居所、水辺  
8 第二   (雑) ハワイ沖レース参加決意 龍峰 名所  
9 第三   (雑・恋) ダイヤモンドに魅せられし乙女いて 九分九厘 人倫の運び  
10 第四   (雑) 先の戦い夢幻か 葉有露 神祇  
11 第五    (冬) 目をこすりよくよく見れば雪をんな 龍峰 人倫の運び  
12 第六 (雑) 手を取りて溶けて虚しき空  九分九厘 人倫の運び、述懐  
13 第七   (秋の月) 満月を機影行き過ぎ窓を閉め 葉有露 天象、旅、居所  
14 第八 (秋) 秋の三井寺母子再会 龍峰 秋、釈教・名所、人倫  
15 第九 (秋) 寂滅為楽鐘ぞさやけく響き 九分九厘 釈教、釈教  
16 第十 (雑) 生きそして死ぬ主と共にいて 葉有露 釈教、神祇  
17 第十一  (春の花) アルプホルン鳴りゆく園は花吹雪 龍峰 芸能、植物  
18 折端  (春) ドレミの歌に春山淡冶 九分九厘 芸能、山類  
  【名残の表十二句】        
19 折立 (春) 源平の戦船行き春の沖 葉有露 人倫、(旅)、春、水辺  
20 第二    (雑) 朝夕の日に輝く螺髪 龍峰 時分、天象、釈教  
21 第三 (雑・恋) 富士煙ゆくへも知れぬ我が思ひ 九分九厘 山類・名所、人倫、恋  
22 第四 (雑・恋)  かの人去りて今は懐かし 葉有露 人倫の運び、恋  
23 第五 (冬) サントノレ通り闊歩すマフラーよ 龍峰 名所、衣類  
24 第六 (雑) ブティック物色財布は細る 九分九厘    
25 第七 (雑)  かって銀座とはいえヒルズ雲の上 葉有露 名所  
26 第八   (雑) 道風目覚めたり書道とや 龍峰 人倫  
27 第九   (雑) 浄瑠璃の小屋に吹き入る鳴門風 九分九厘 芸能、居所、名所  
28 第十 (雑) 旨酒積みし船遠ざかる 葉有露 食物、旅  
29 第十一(秋の月) 志士たちの議論諤々夜半の月 龍峰 人倫の運び、時分、月  
30 折端 (秋) 紅葉且つ散る人気も無くて  九分九厘 植物  
  【名残の裏六句】        
31 折立 (秋) 錦木に見送られおり歌仙旅 葉有露 植物、芸能、旅  
32 第二 (雑) 出で湯久々伸びし髭剃る 龍峰 人倫の運び  
33 第三 (雑) さてとそろそろ決戦か巌流島 九分九厘 名所  
34 第四 (雑) 仕事の後の冷酒うれし 葉有露 食物  
35 第五(春の花) 花の香の風のさそひに旅支度  龍峰 植物、旅  
36 挙句 (春) のどけき春の日の静ごころ 九分九厘 春、天象、述懐  
           
  注記)        
    緑;去り嫌いの該当語 青;去り嫌い対象語 赤;式目抵触の文言    
    朱;検討課題      
   主に「歌仙入門要諦」「歌仙・人倫」「去り嫌いと句数」より検討した。  
           
  式目抵触        
  1)NO5[鰻」はNO3「鹿」に対し「異生類」2句去りに抵触    
  2)NO23「サントノーレ通り」はNO21[富士」に対し「名所」2句去りに抵触  
  3)NO25[銀座」はNO23[サントノーレ通り」に対し「名所」2句去りに抵触  
  4)NO27[鳴門」はのNO25「銀座」に対し「名所」2句去りに抵触    
           
  検討課題        
  1)今回の歌仙では季節は秋春冬で夏は詠まれていない。夏を2句程度詠むべきだった。  
  2)「月の定座」はNO4,NO13,NO29と3回とも秋となった。    
    歌仙の基本定座ルールでは発句が冬の場合はNO13は夏の月となっている。その方がよかったかも  
    知れない。尚、ルールではNO13は、発句が春秋冬の場合は夏、発句が夏の場合は冬となっている。  
  3)NO1「青によし」は「奈良」「国内・くぬち」にかかる枕詞    
   「青によし」の語源は奈良であおに(岩緑青)が採掘されたからとも、平城京の華々しい朱色(に・丹色)に、木々の緑(あお、青色)が映えているからとも。 
   そのことから枕詞になったとか。      
    尚、本句では「青によし」は後続の句の全体・(奈良)にかかる。       
       
  4)NO10「幻」、NO11「雪をんな」のカテゴリは? 「幻」は夢と同じ扱いとする。「雪をんな」
    は普通名詞とする。      
  5)繰り返し出現する言葉      
    酒;NO6新酒、大吟醸  NO28旨酒  NO34冷酒      

 

 

 

歌仙山手会(其の一)東大寺の巻(旧版)

 

       


 神戸の六甲山に馴染の深いメンバーが、山手会と称して連句の勉強を始めました。そろそろ三年近くになろうとしていますが、師匠なしでも漸く歌仙の基本が分かってきたようです。ここで心機一転、Hatena Blog に参入して本格的な歌仙に挑戦することになりました。晩秋の候、歌仙を再スタートするには絶好の時です。メンバーは八十路半ばの俳句愛好者です。

 

【表六句】

1,発句(冬)   青丹によし唐人も居る冬の古寺      葉有露

2,脇 (冬)   時雨来て駆け込む大庇          龍峰

3,第三(秋)   夕焼けの鹿寄せ始むホルンにて      九分九厘

 「鹿寄せ」は秋の季語になっています。冬の風物詩ともいいますが、最近は観光用向けに四季を通じて行っているようです。ホルンはヴェートーベンの「田園」の一節を吹きます。唐人も喜んでいることでしょう。

4,   四句目(秋)  月明かり増し山山寝入る         葉有露

5,五句目(秋〕   峡深き瀬に身をまかす落ち鰻       龍峰

6,折端  (秋)   江戸前に新酒大吟醸            九分九厘

 「江戸前」といえば、今では寿司や天ぷらの素材や調理法を指すことが多いが、もとはといえばウナギに対して使われる言葉であったという。かつての江戸湾はウナギの宝庫。

 

【裏十二句】

7,折立(雑)   隔離棟出でて風あり生を知る       葉有露

  十二日間入院後、退院直後の感想です。   

8,二句目(雑)  ハワイ沖レース参加決意         龍峰

  風と言えば、昔取った杵柄、この際帆にいつも快適な風が吹いているハワイのレースに参加しよう。

9,三句目(雑・恋) ダイヤモンドに魅せられし乙女いて   九分九厘

  ハワイオアフ島のダイヤモンド・ヘッドに因んで詠みました。

10,四句目(雑)  先の戦い夢幻か              葉有露

11,五句目 (冬)   目をこすりよくよく見れば雪おんな      龍峰

         あれは決して幻ではない。

12,六句目   (雑)   手に取りて溶けて虚しき空        九分九厘

 

13、七句目(○の月)                       葉有露

14、八句目                         龍峰

15、九句目                         九分九厘  

16、十句目                         葉有露

17、十一句目(春の花)                    龍峰

18、十二句目(春)                      九分九厘